というわけで、結婚してください!
「何処なんですか? 此処」
街からそう距離があるわけでもないのに、湾岸沿いのその駅は無人駅だった。
「やっぱり車がいるなと思って。
少し歩け」
そう言われ、尊《みこと》について歩く。
線路の向こうは山で、その山の中腹に幾つかログハウスがあった。
「昔、よく秀たちと来てたんだがな。
鍵持ってきといてよかった」
と言いながら、尊はそのうちのひとつの玄関を開けた。
誰かが換気したり、掃除したりしているのか。
長く来ていないというわりには、湿った匂いがこもったりはしていなかった。
「あの、これからどうされるおつもりなんですか?」
そう訊きながら、そっと尊について入ると、うん、そうだな、と高い天井についているシーリングファンのスイッチを入れながら、尊は言う。
「最初の予定では、お前に俺の子を孕《はら》ませようと思ってたんだが」
鈴は自分で閉めてしまったドアに張りつき、逃げようとした。