というわけで、結婚してください!
「鈴は見つかったのか」
まだ教会に居た征《せい》は側に居た武田数志《たけだ かずし》に言った。
数志は清白《すずしろ》家の執事長の息子で、本人も執事見習いという名のもと、清白家でなんでも屋のように様々な業務をこなしている。
小さい頃から一緒に居たせいで、征とは使用人と主人のような、友人同士のような不思議な関係が続いていた。
「見つかりませんねえ。
もういいんじゃないですか?
連れて逃げたの、尊《みこと》さんですし。
家同士の関係での結婚なら、本来は、跡継ぎになるはずだった尊さんのものですよね? あの子。
征さん、家も会社も手に入れたんですから、花嫁くらいくれてやったらどうですか?」
と数志は言ってくる。
「ほら、あの可愛い子狸《こだぬき》みたいな、支倉《はせくら》の社長もああして謝ってらっしゃるわけですし」
本来、鈴の父親は謝るような立場にはないのだが。
娘が連れ去られたことで、式を台無しにして申し訳ないと、小さくプルプル震えながら、招待客に謝って歩き、同情を買っている。
だが、征はそんな鈴の父親の後ろ姿を見ながら、ふん、と鼻を鳴らした。