というわけで、結婚してください!
「なにを。
 あの狸が本心から謝ってなどいるものか」

 見かけは可愛い子狸のようだが、中身は、あれでなかなかだ。

 まあ、そうでなければ、大企業の社長など務まるわけもないのだが。

 っていうか、いつの間にか、腕に抱いてる、あの小さな狸っぽいものはなんだ?
と征は鈴の父親によく似ている、狸よりは一回り小さい気がするイキモノを見た。

 鈴より、このイキモノの方がこの父親に似て居る気がするが……と思ったとき、

「征様」
と外から男たちが帰ってきた。

「おっしゃる通り探してみたら、海沿いの最近使用されてなかったログハウスに誰かが立ち寄った痕跡がありました」

 尊が鈴を連れ去ったあと、征はすぐにネットをチェックしたのだ。

 あいつ、ざっくりな奴だからな。

 鈴にウェディングドレスを着せたまま連れて逃げてそうだと思い、調べてみたら、案の定、そのまま逃げていた。

 オープンカーに乗った素敵な新婚さんとすれ違った、から始まり、電車で移動している新婚カップルを見た、まで全部出ていた。

 最初から、秀の整備工場には目星をつけていたので、車で逃げていたのは、予想通りだったが――。
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