というわけで、結婚してください!
 鈴は一度、目を伏せ、自分の気持ちを整理してから言った。

「確かに。
 そこまで行っても、なにもないかもしれません。

 でも、行ってみたいんです、もう一度。

 自分の気持ちをはっきりさせるためにも」

 なにかやり残したことがあるような気が、ずっとしている。

 初めて行く土地なのに、何故か郷愁を感じるようなあの街並みを見ながら、自分はなにかをずっと考えていたような気がする――。

「行っても、きっとなにもありません。
 でも私……、尊さんと行きたいんです」

 鈴は、はっきり征の目を見て、そう言った。

 ごめんなさい、と思っていた。

 やり方が間違っていたとは思うけど。

 この人が私を好きでいてくれたのは、本当になのに、と思ったとき、縛られて吊るされていたせいで、赤くなっている手首が痛んだ。

 まあ、本当に間違っていたとは思うけど……。

 そう思いながらも、鈴が深々と頭を下げたとき、いきなり後ろで聞き覚えのない声がした。
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