というわけで、結婚してください!
 なんだろう。

 めちゃくちゃ寝不足なのに。

 なにひとつ問題は解決していないのに。

 朝日の中、この街を走っていると、なにやら、爽快な気持ちになってくる。

 なにかから解き放たれたようなというか――。

 そんなことを鈴は思っていたのだが、尊は、

「お前のしょうもない小話を聞いている間に着いてたな」
と言いながら、苦い顔をしている。

「あれ? お気に召しませんでしたか?」
と尊を振り向き、訊くと、尊は、

「いや、……ハリネズミの話が気になっただけだ」
と言ってくる。

 あー、最初に話したハリネズミの話、
と清白邸を出てすぐ、夜道を走りながら語った話を鈴も思い出す。
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