というわけで、結婚してください!




 社宅の駐車場に入ったとき、また尊のスマホが鳴り出した。

 まだか、と支社長がかけてきたようだった。

「早く行ってください、尊さん」

「いや、お前を部屋まで送り届けてから行く。
 物騒だから」

「私なら大丈夫ですよ。
 尊さんが上司の人に叱られる方が嫌です」
と数志が見ていたら、

「……いちゃいちゃしてないで、さっさと行ったらどうですか?」
と冷ややかに言ってきそうなやりとりをしたあと、

「じゃあ、私、急いで部屋に入るんで、尊さん、そこから見ててください」
と鈴は言った。

「いや、中に入って、一周見て、おかしな奴が居ないか確認してから、スマホを鳴らせ。
 お前の無事を確認してから行く」

「あっ、じゃあ、急いで行きますねっ」
とシートベルトを外して、立ち上がりかけた鈴の手首を尊がつかんだ。

 もう一度、座らせる。
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