というわけで、結婚してください!
 




 明け方、外の廊下を歩く足音がして、鈴は目を覚ました。

 寝たまま、目を開け、窓の外を見ていると、廊下を歩いてきた尊が、ひょい、とこちらを見て、うわっ、と声を上げる。

 あとから聞いたところによると、カーテンが開け放たれた部屋に死体のように横たわった女の目だけが自分を見ていて怖かったそうだ。

「……尊さん帰ってくるかなーと思って、廊下と月を眺めながら寝たんです」
と朝食の席で言うと、

「カーテンは閉めろ、征が来るだろ」
と言ってくる。

 まるで、窓は閉めろ、蚊が来るだろ、と言うように。

 そこで、クロワッサンを食べる手を止め、尊は呟く。

「……昨日の夜、支社長と話してるとき、なにか忘れてる気がしたんだよな。
 思い出せないんだが」
< 441 / 477 >

この作品をシェア

pagetop