絶対俺の嫁にするから~御曹司のイジワルな溺愛包囲網~
なにも知らないくせに、勝手なことを言わないでほしい。

でも悲しげに瞳を揺らすふたりを目の当たりにし、後悔する。でも一度伝えた言葉を、訂正することはできない。それに嘘はないから。

だけどこれ以上ふたりと一緒にいることが耐えられなくて、涙を拭いバッグを手に席を立った。

「ごめん、先に帰る。支払いは事前に済ませているから、ふたりはゆっくりしてきて」

一方的に言い席を後にすると、背後からすぐふたりが私を呼ぶ声が聞こえてきた。

「麻衣子」

「待ちなさい、麻衣子」

だけど私は足を止めることなく、駆け足で店を後にした。

路地から表通りに出て、必死に夜の街を駆け抜けていく。

言いたいことだけを言って逃げるなんて、子供のすることだ。わかっているのに、耐えられなかった。

自分の気持ちが伝わらないもどかしさに、涙が溢れて止まらない。

もう全部が嫌だ。上杉さんと磯部さんの関係にヤキモキする自分も、両親に対してうまく接することのできない自分も。
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