君との恋はあたたかいものだった。
~翔side~

 ありえねぇよ。そんなの男じゃねぇ。なんで、愛奈が泣かなくちゃならねーんだよ。なんで、愛奈が苦しまなきゃいけねーんだよ。おかしいだろ、そんなの。

 話の途中で、愛奈は「バカみたいでしょ?」って笑った。そんなことない。騙したあいつが悪いんだ。目に涙を浮かべて、流れないようにこらえてる。

「俺は愛奈のこと好きだよ。」
 え?何言ってんだ!?この流れで言う事じゃないだろ!もっとタイミング考えろよ!嘘じゃないけど。ってそうじゃなくて!

「翔。」
 なんて言われるんだ?やっぱ振られるよなぁ……。
「同情してんの?そんなことされても嬉しくないから。」
 ………は?え、なんて言った?
「同情じゃねーよ。本心。」
「嘘つかないでよ!」
「嘘じゃねーって!前から好きだったんだよ!」
「そんなの、そんなの信じれるわけないじゃん!」

「じゃあ。どうしたら信じてくれんだよ?」
「え?えーっと、それは………。」
 愛奈の次の言葉をまつ。でも、確かにな。このタイミングだもんな。信じれなくても仕方ないか。

「特に何するってわけじゃないけどさ。とにかく信じれないの!もう帰るから。」
 「聞いてくれてありがと」って言って立ち上がったとき、俺は無意識に愛奈に手を伸ばして、抱きしめていた。

「ちょ、ちょっと!何してんの?好きでもない女の子にそんなことしちゃダメでしょ?」
「好きだからしてるんだけど?」
 ブワァッと耳まで赤くして、俯いている。こういうとこ、可愛いよなぁ。離したくないなぁ。なんて思ったとき、

 ーーバタン!
 え?そーっと後ろを振り向くと、奈緒がいた。
「翔!あんた、愛奈に何してんのよ!」
「べ、別に?なんもしてねーし。」
「じゃあ、その手はなんなのよ?」
 自分の手に目線をうつすと、まだ愛奈のことを抱きしめたままだった。ビックリして、手を離すと愛奈は力が抜けてその場に座りこんでしまった。

「ほら!何したか言ってみなさいよ?」
「お前こそ何しに戻ってきたんだよ?」
「あたしは、愛奈に謝ろうと思って昇降口で待ってたの!なのに全然来ないから何かあったんじゃないかと思って。それで心配になって戻ってきたの!」
 俺を睨みながら、「愛奈行くよ」って教室を出て行ってしまった。

 それより、告白してしまった……。どうしたらいいんだ?もー分かんねぇ。言ってしまったものは仕方ない!とりあえず、愛奈が心配だ。大丈夫か?あいつ。このとき、俺は絶対愛奈を守るって決めた。愛奈の泣いた顔はもうみたくないから。
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