彼と私のかくれんぼ
「礼を言うのはこっちだよ。俺、紗英のおかげで今、すっごく幸せだ」
トクン、トクン、とふたりの鼓動が重なっていく中で、不意に庄司くんが自分のポケットに右手を入れた。
そこから出てきたのは、小さな小箱。
それを大事そうに、私の手のひらにそっと置いてくれる。
「開けてみて」
庄司くんの言葉にうなずいて、シュルシュルとシルバーのリボンを外し、箱を開けると、そこにはキラキラと光るダイヤモンドがついた指輪が鎮座していた。
「え……?」
驚きと戸惑いで固まる私と、ちょっとだけ緊張した面持ちの庄司くんの目線が交わる。
「まだ就職して二年目だし、早いかなとも思ったんだけど……。俺、紗英と一緒に暮らしたい。結婚して、俺と東京で暮らしてくれませんか?」
庄司くんとの未来を想像していなかったわけじゃない。
だけど、このタイミングでプロポーズされるとは思っていなくて、中々言葉が出てこない。
そんな私に、庄司くんは優しく言葉を紡ぐ。
「今すぐじゃなくてもいいから。紗英がこっちに出てきて頑張ろうって思ってくれたタイミングで返事をくれないか? もちろん不安だってあるだろ。でも約束する。俺が、紗英を守る。何があっても守るから」
庄司くんの気持ちがうれしくて、言葉が出てこない。
俯いて動かない私の頭の上から、不安そうな庄司くんの声が聞こえてくる。
「紗英……?」
「庄司くん……」
「ん?」
「どうしよう。私、すごいうれしい。うれしくて、幸せだよ」
顔を上げると、不安で揺れている庄司くんの瞳の中に、涙を必死でこらえている私の顔が映っていた。