溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

片瀬と優花が気持ちを通い合わせた日から二週間。喜和子の言う通り、優花は連日、片瀬に守谷会計事務所まで送り届けられていた。

忙しい片瀬のこと。さすがに帰りまで迎えにくることはないが、毎朝ギリギリまでふたりで過ごせる時間は優花にとって特別で、とても愛おしい。

仕事から帰ると、片瀬は優花のそばを離れず、常に触れ合う距離にいたがる。夕食の後片づけで離れるほんのわずかな時間でさえ惜しいらしく、手を貸してくれるのだ。

最後の一線こそ越えていないが、優花はこれまでの自分には考えられないくらいの幸せな毎日を送っている。

守谷と喜和子にも、ふたりの中は周知の事実。というのも、送ってもらった初日に片瀬がふたりに挨拶がてら報告してしまったから。一緒に暮らしていることは、なんとなく気恥ずかしいため、まだ内緒だ。

最初こそ目を点にして驚いていたふたりは、『悪い虫がつかないよう、よろしくお願いします』と片瀬から深く頭を下げられたときには、『任せてください』と頼もしく胸を張った。

片瀬の車がすっかり見えなくなるのを一緒に見送っていた喜和子は、「若いっていいわね。羨ましい」と優花をお尻でポーンと小突く。


「私と主人の若い頃を思い出しちゃうわ。ああ見えて、結構情熱的だったのよ」


事務所に着くまでの短い距離で昔話を語り始めたのだった。
< 113 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop