溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「あんまり片づいてないけど」
謙遜しながら亜衣が通してくれたのは、カントリー調の木材の家具が温かみのある1DKの部屋だった。
綺麗に整頓され、一見して掃除も行き届いている。亜衣の言うように片づいていないところ言ったら、テーブルの上に置かれた雑誌の類くらいだ。
「なんか亜衣らしいね」
「そう? あんまりジロジロ見ないでね。恥ずかしいから。その辺に適当に座ってて。今、すぐにお茶でも淹れるね。あ、コーヒー、紅茶、緑茶、いろいろあるけどなにがいい?」
いったんソファに荷物を置いた亜衣は、キッチンに向かいながら優花に振り返る。
「亜衣が今飲みたいものと同じで」
そうお願いすると、「遠慮しなくていいのに」と亜衣は笑った。
毛足の長いラグの上に腰を下ろし、亜衣を待つ。
ぼんやりとした時間が流れると、優花がどうしても思い出すのは片瀬のことだった。