溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「あんまり片づいてないけど」


謙遜しながら亜衣が通してくれたのは、カントリー調の木材の家具が温かみのある1DKの部屋だった。

綺麗に整頓され、一見して掃除も行き届いている。亜衣の言うように片づいていないところ言ったら、テーブルの上に置かれた雑誌の類くらいだ。


「なんか亜衣らしいね」
「そう? あんまりジロジロ見ないでね。恥ずかしいから。その辺に適当に座ってて。今、すぐにお茶でも淹れるね。あ、コーヒー、紅茶、緑茶、いろいろあるけどなにがいい?」


いったんソファに荷物を置いた亜衣は、キッチンに向かいながら優花に振り返る。


「亜衣が今飲みたいものと同じで」


そうお願いすると、「遠慮しなくていいのに」と亜衣は笑った。

毛足の長いラグの上に腰を下ろし、亜衣を待つ。
ぼんやりとした時間が流れると、優花がどうしても思い出すのは片瀬のことだった。
< 141 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop