溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
◇◇◇
優花が部屋を飛び出してしばらく経った頃、魂を抜かれたように立ち尽くしていた片瀬は、ふと我に返った。部屋の中を頼りなく彷徨わせた視線で、優花がいないことを思い知る。
――追いかけなければ。
今さら追ったところで手遅れなのはわかりきっているが、片瀬は弾かれたように部屋を出た。
一階から上がってくるエレベーターがやけに遅く、フラストレーションが募っていく。昇降ボタンを連打してところで速まるわけでもないのに、そうせずにはいられない。
(早く。早くしてくれ……!)
やっと到着したエレベーターは片瀬の焦りを嘲笑うかのごとく、ゆっくりと降りていく。
途中の階で乗り込んだ住人は、片瀬を見てギョッとしたような目をした。よほど切羽詰まった表情をしていたのだろう。
一階へ到着するや否や、エントランスを出て左右に顔を向ける。
(どっちだ。どっちへ行ったんだ)
優花が出ていってから五分は経っただろう。当然ながら、優花の姿が見えるはずもない。
大きな荷物を抱えていた優花のことだから、どこかでタクシーでも拾っているかもしれない。