溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

大きなブリーフケースを持った守谷と並んで立ち、電車に揺られる。
午前十時の車両内は通勤ラッシュこそ過ぎたものの、多くの乗客がいて座席はほぼ埋まっている状態。乗り降りの激しい大きな駅に停車したとき、目の前の席が運よく空き、ふたりは並んで腰を下ろした。


「優花さん、新居を探しているんだって?」


不意に守谷に尋ねられた。

通勤のことを考えれば、事務所の近くがいい。どこかいい不動産屋はないかと喜和子に尋ねていたが、そのことを彼女から聞いたのだろう。


「はい。今、友人のところにお世話になっていているんですが、あまり長くはいられないと思いまして」


先日の土日と、近くの不動産屋をあたってみたが、値段の折り合いがつかずにいる。破格のアパートを見つけたと思えば、事故物件だったり、お風呂やトイレが共同だったり。

(さすがに以前みたいに一万円で借りられるとは思っていないけど。せめてお風呂とトイレは付いていてほしいな……)
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