溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
片瀬の行動のすべてが優花を動揺させる。
同窓会に無理に誘ったことも、優花を着飾らせたことも。片瀬の意図がまったく読めない。
「ううん、大丈夫だから。片瀬くんのことはみんなが待ってると思うから、先に行ってあげて」
ただでさえ優花の支度に手間取り、開始時刻の五時を三十分も過ぎてしまった。
片瀬は優花を数秒間じっと見つめた後、「わかった」と納得し、エレベーターへ足を向ける。
片瀬がエレベーターに乗るのを見届けてから、優花はその並びにあるレストルームに入った。
なんとはなしに手を洗い、鏡に映った自分を見る。
緩く編み込まれてハーフアップにされた髪が、胸もとで大きなカールを描く。ラメを適度に利かせ、ピンクベースで仕上げてもらったメークは、普段使うことのないアイラインで目もとが引き締まり、自分のようで自分でない、不思議な感じがした。
「ちょっとだけ顔を出したら、それで帰ろう」
きっと話しかけてくれる人もいないだろう。
優花は自分に言い聞かせるつもりでひとり言を呟き、レストルームを後にした。