溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
エレベーターで三階へ上がると、目の前に同窓会の案内板があった。右手奥へ足を進めていくと、人の出入りがある豪奢な扉を見つけた。おそらくそこが会場なのだろう。
受付と思われるブースには、すでに人がいない。開始時刻が過ぎたため、中に入ってしまったようだ。
同級生と会うのは、実に十年ぶり。しかも、親しいと言える友人がいない輪の中に入るのには、相当の勇気を要する。
極度の緊張に包まれる中、重い扉を開くと、賑やかな声がすぐに耳をつく。広い会場内は、多くの人たちの笑い声で溢れていた。
センターに置かれたいくつものテーブルの上にはたくさんの料理が並び、料理や飲み物を手にとり、みんなは思い思いに友人たちと歓談している。
(どうしたらいいかな……)
ひとまず足を踏み入れたものの、気後れしてその場で立ち止まる。
ざっと見渡してみても、見知った顔を見つけることができずにいた。卒業して十年、記憶の中の顔もおぼろげだ。
奥の方で男女合わせた十数名に囲まれた片瀬を見つけたが、その輪に入る勇気はない。片瀬も優花に気づく様子はなかった。