Crazy for you  ~引きこもり姫と肉食シェフ~

「た、尊……!」
「俺が隠してたのは、莉子が好きって事」

途端に背中が硬直したのが判った。

「す、すすすす、好き!?」

尊の耳元で叫ぶ。

「そう、好き。ずっと言いたかったけど、なんかタイミング逃してた。でも莉子が秘密を話してくれたんなら俺も言わないとね。莉子が好きだ、大好きだ」

少し待ったが、莉子の返事はなかった。尊が腕を緩めると、莉子から離れた。 尊の顔も見れずに両手で口元を覆う。

「莉子、好きだよ」

莉子は微かに頷いただけだった、尊はにこっと微笑んで応えにする。

腰を抱く様にして莉子に歩く様に促した、莉子はぎこちない動きで歩き出す。 玄関までがこんなに遠いとは思わなかった、その間尊はずっと莉子の腰を抱いたままだった。 玄関前まで来ると、莉子が小さな声で礼を述べる。

「部屋に入るまで見送る」

尊に言われて、莉子は慌てて鞄を開き鍵を探した。鍵は鞄から出るとすぐに莉子の手から逃げて床に落ちる。

「あ……っ」

先に動いたのは尊だった、長身を屈めてその鍵を拾うと莉子の手の平に置いた。

「あ、ありがとう、ございます……」

震える手で鍵穴に挿そうとするがうまくいかない。その背中を尊の体が覆った。左腕は莉子の腰に回し、右手は莉子の手に添えられる。温かく大きな手に包まれたままドアノブの上下にある錠が外された。

「──莉子」

優しい声が直接耳に注がれた、莉子はひくりと体を震わせる。

「また明日。店で待ってる」

そう言ってこめかみにキスをした、莉子は完全に思考が停止する、全身が硬直し呼吸すら忘れそうな感覚になる。
尊がドアを開け、莉子を中へ半ば押し込んだ。 莉子は素直に部屋に入っていた、ドアを閉めたのも尊だった、ドアの向こうで尊の気配が去るのを感じる。莉子はドアにもたれたまま、ずるずるとその場に座り込む。
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