野獣は時に優しく牙を剥く

 家に帰ると「本当に帰ってきたのか」とガッカリ顔の祖父に出迎えられて、祖父はどこまで谷の味方なのかと呆れる思いだった。

 寝室では天使の寝顔でスースーと安定した寝息を立てて眠る颯太と浩太にホッと息をついた。
 喘息の発作は落ち着いたようだ。

 二人の側に横になって頭を撫でながら返事をするわけのない二人に呟く。

「お姉ちゃん、颯と浩を言い訳にしてるのかなぁ。」

 返ってくるはずのない返事に澪は一人考えを巡らせる。

 ひどい言われようだったのに反論出来なかった理由に、ひどく言われたのに彼を優しい人だと未だに思っていることがどうしてか。

 そしてどうして彼が自分を嫁にもらうだなんて言い出したのか……。
 答えの出ない問いにいつの間にか眠っていた。
< 103 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop