野獣は時に優しく牙を剥く
「気に入ってくれた?
俺が作った……って言えたら格好がつくんだけど。
料理人に頼んだよ。
恥ずかしい話、家事全般に苦手で。」
バツが悪そうに話す谷へ言葉をこぼした。
「お弁当箱は洗ってありましたよ。」
今度は谷が言葉を失って、澪が言った意味をすぐには理解できないように視線を澪へ向けた。
「何、それって家事に含まれるの?
そのくらい小学生でも出来るよ。
汚れたまま返すほど礼儀知らずじゃない。
俺のことどんなイメージ?」
「どんなって……。
普段はボロを一切出さない完璧人間で、だけど実は家事が苦手だと思っていました。」
「完璧人間って笑えちゃうけど、まぁ家事が苦手で合ってるよ。」
澪の発言に頷く谷にもう一つのイメージを伝えた。
「けどそれは私を助ける為の仮の姿で、実はやろうと思えばやれてしまう全部完璧な人なんじゃって………。」
「俺、また夢を壊してる?」
ハハッと軽い笑いを吐いて一歩近づいてきた彼から距離を取るとかぶりを振った。