野獣は時に優しく牙を剥く
知らなかった事実に澪が考えを巡らせる中、谷はもっと驚くことを話し始めた。
「卒業生だからと声がかかって高校へ話に行ったんだ。
若手起業家として成功の秘訣を話して欲しいと頼まれてね。」
自分が通っていた時もそういう著名人とかの有り難い話があったなぁと呑気に考えていると話は先へと進んでいく。
「まだポータブルヘルスケアを出したばかりで軌道に乗せる前だった。
名も売れていない。
ただ俺の外見で知っていた一部のファン的な奴のノリで呼ばれただけだった。」
嘲笑うように吐露する彼は自分の目立つ外見を忌々しく思っているようだった。
鼻で笑って吐き出すように言った。
「ガッカリしたよ。
キャーキャー言われて追いかけ回されて。
昼も食い損ねて。
そこでパンをくれた。」
真っ直ぐに澪を見つめる谷に目を見開いた。