野獣は時に優しく牙を剥く

「素敵ですね。
 澪、おばあちゃんの気持ち、喜んで受け取ろう。」

 優しく微笑まれて頷くしかなかった。

 そしてもう1つを私へ差し出した。
 それは角がくたびれた通帳だった。

「ずっと、澪が小さい頃からコツコツ貯めてきた。
 こういう時の足しになればと思ってな。
 微々たるもんだが、持ってってな。」

「おじいちゃん………。」

 視界が揺らめいてぼやけてしまって澪は俯いて手で顔を覆った。
 有難い気持ちと罪悪感とが綯い交ぜになってぐちゃぐちゃになる。

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