クラスメイトの告白。
私は、帽子の横に置いてあった彼のスマホが目に入った。
「ねぇ、伊原くん」
彼は目をとじたままで、反応がない。
「起こしてごめんね、伊原くん」
寝ている彼の肩をトントンとたたくと、彼はぼんやりとした顔で私を見た。
「ごめん、私のスマホバッテリー切れで。伊原くんのスマホかりてもいい?」
彼の顔の前にスマホを見せると、彼は小さくうなずく。
彼が画面のロックを解除してくれたスマホを持って、私は玄関から外に出た。
うちの家に電話をかけようとするけど、なんて言えばいいのかわからない。
男の子の家に泊まるなんて、親に言えるわけない。
べつにやましいことしているわけじゃないけど、親に本当のことを話して、もし伊原くんに迷惑がかかるようなことがあったら嫌だ。
友達の家に泊まると言おう。
伊原くんが友達なのは、嘘じゃないし。
だけど本当のこと、全部は親に言えない。
「あ、もしもし、風杏だけど……うん、連絡が遅くなってごめんなさい……」