クラスメイトの告白。


「音とは、いまクラスも違うし、学校でいきなり話しかけて私のカウンセラーのことを話すのは不自然かなと思って……。偶然、病院の前で会えたからチャンスだと思ってさ」


「ありがとう、赤西さん」


「汐野さんに頼まれたことは、音に言ってないから安心して。あとは音が決めることだから見守ってあげて」


「うん……そうだね」


「きっと、いい方向に行くよ」


「うん。赤西さんは、大丈夫?」


赤西さんはバスの窓から少しだけ顔を出して、外を見つめる。


「こんなふうに風が気持ちいいとか、陽射しがあったかいとか、日常のどうってことない小さな幸せは、もう二度と感じられることはないと思ってた。出口のない真っ暗なトンネルの中にいたから」


風を気持ちよさそうにして、赤西さんは目を閉じる。


そして彼女は私に言った。


「やり直せるよね? 時間はかかっても……」


「うん」


「汐野さんにうなずいてもらうと、信じられる気がする」


「本当?」


「汐野さんて、すごい人だよね」


「え……?」


「なんていうか……夏のひまわりみたいな感じ?」


「夏のひまわり?」


「かわいくて、まっすぐで、そばで見てるだけで元気もらえる」


赤西さんは、私を見て微笑んだ。
< 289 / 372 >

この作品をシェア

pagetop