クラスメイトの告白。
「音とは、いまクラスも違うし、学校でいきなり話しかけて私のカウンセラーのことを話すのは不自然かなと思って……。偶然、病院の前で会えたからチャンスだと思ってさ」
「ありがとう、赤西さん」
「汐野さんに頼まれたことは、音に言ってないから安心して。あとは音が決めることだから見守ってあげて」
「うん……そうだね」
「きっと、いい方向に行くよ」
「うん。赤西さんは、大丈夫?」
赤西さんはバスの窓から少しだけ顔を出して、外を見つめる。
「こんなふうに風が気持ちいいとか、陽射しがあったかいとか、日常のどうってことない小さな幸せは、もう二度と感じられることはないと思ってた。出口のない真っ暗なトンネルの中にいたから」
風を気持ちよさそうにして、赤西さんは目を閉じる。
そして彼女は私に言った。
「やり直せるよね? 時間はかかっても……」
「うん」
「汐野さんにうなずいてもらうと、信じられる気がする」
「本当?」
「汐野さんて、すごい人だよね」
「え……?」
「なんていうか……夏のひまわりみたいな感じ?」
「夏のひまわり?」
「かわいくて、まっすぐで、そばで見てるだけで元気もらえる」
赤西さんは、私を見て微笑んだ。