クラスメイトの告白。
「紫蘭どした?俺に会いに来たの?」
彼女の名前は、紫蘭(しらん)というらしい。
「先輩とふたりきりになりたくて」
紫蘭ちゃんは、緑河くんの腕にぎゅっとしがみつく。
本当に彼女いないの……?
私は疑いの目で緑河くんを見る。
そのとき、休み時間が終わるチャイムが鳴った。
事故について何も聞けなかったけど、しかたがない。
「じゃあ、私行くね」
私は、ふたりをおいて階段を上がろうとすると、うしろから緑河くんの声がした。
「風杏、俺に何か話があったんじゃないの?」
「あ……うん。またねっ」
私がニコッとすると、緑河くんは笑顔でうなずく。
彼の横にいた紫蘭ちゃんも、私に軽く頭を下げて微笑んだ。
紫蘭ちゃん、いい子そうだ……。
私が階段を上がっていく途中、ふたりの会話が聞こえる。
「先輩、次の授業なぁに?」
「音楽だよ」
「じゃあ4時間目が終わったら、音楽室の前で待ってるね」
「あー、ごめんな。今日の昼休み、先約あるんだよね」
「えー?」
「ごめん、ごめん。埋め合わせはちゃんとするから」
「ふふっ、昨日のつづきもね?」
階段をおりていったふたりの会話は聞こえなくなった。
どう見ても、彼女でしょ。
図書室でキスしたり、ふたりの会話を聞いてても付き合ってるとしか思えないんだけど……。
それより緑河くんに事故のときの話、聞けなかった。
伊原くん、ごめん。
相棒なのに、役立たずで。
次はちゃんと話聞けるようにがんばるからね。