クラスメイトの告白。


「紫蘭どした?俺に会いに来たの?」


彼女の名前は、紫蘭(しらん)というらしい。


「先輩とふたりきりになりたくて」


紫蘭ちゃんは、緑河くんの腕にぎゅっとしがみつく。


本当に彼女いないの……?


私は疑いの目で緑河くんを見る。


そのとき、休み時間が終わるチャイムが鳴った。


事故について何も聞けなかったけど、しかたがない。


「じゃあ、私行くね」


私は、ふたりをおいて階段を上がろうとすると、うしろから緑河くんの声がした。


「風杏、俺に何か話があったんじゃないの?」


「あ……うん。またねっ」


私がニコッとすると、緑河くんは笑顔でうなずく。


彼の横にいた紫蘭ちゃんも、私に軽く頭を下げて微笑んだ。


紫蘭ちゃん、いい子そうだ……。


私が階段を上がっていく途中、ふたりの会話が聞こえる。


「先輩、次の授業なぁに?」


「音楽だよ」


「じゃあ4時間目が終わったら、音楽室の前で待ってるね」


「あー、ごめんな。今日の昼休み、先約あるんだよね」


「えー?」


「ごめん、ごめん。埋め合わせはちゃんとするから」


「ふふっ、昨日のつづきもね?」


階段をおりていったふたりの会話は聞こえなくなった。


どう見ても、彼女でしょ。


図書室でキスしたり、ふたりの会話を聞いてても付き合ってるとしか思えないんだけど……。


それより緑河くんに事故のときの話、聞けなかった。


伊原くん、ごめん。


相棒なのに、役立たずで。


次はちゃんと話聞けるようにがんばるからね。
< 78 / 372 >

この作品をシェア

pagetop