クラスメイトの告白。


目の前には、伊原くんの住んでいるアパート。


私は無意識のうちに、この場所に来てしまったみたい。


自転車から降りた私は、アパートの二階を見上げる。


「きっとまだ、アルバイト先から帰ってきてないよね……うちに帰ろ」


自転車に乗ろうとしたけど、なんだか気になる。


休みの前、学校で伊原くんの様子がおかしかったからだ。


伊原くんが廊下を歩いていたときだった。


彼が一瞬ふらついたあと、壁に手をついてしゃがみこんでいるのを偶然見てしまった。


学校では気軽に話しかけられないから、すぐにスマホで“大丈夫?”と伊原くんにメッセージを送った。


すると、“平気、なんでもない”と返信がきた。


だけど私の心配は消えなかった。


今日も昼ごろに彼のスマホへメッセージを送ったけど、まだ返信はない。


バイト中だと思うけど、彼の体調のことが気になる。


自転車を止めた私は、アパートの階段を上がっていく。


伊原くんの部屋の前に立った私は、インターホンを鳴らした。


「……やっぱり、まだ帰ってきてないよね」


私は、彼の部屋のドアにもたれかかった。


伊原くんの顔を見たら、うちに帰ろう。


私はここで、彼の帰りを待つことにした。
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