嫌われ者の小鳥遊さんは、好かれることに慣れてない
小鳥遊笑羽(たかなし えみは)、それが私の名前。明るい雰囲気の名前とは正反対の性格で、陰で「名前負け」と何回言われたことだろう。



高校に入学して早々、私はクラスから孤立した。と言っても、中学でも孤立していたので状況としては然程変わらない。

強いて言えば、中学の時よりも周囲の態度が露骨ではない事くらい。



男子や教師の目や評価を気にする女子達は、表立って何かを仕掛けてくるということは無かった。



中学の時はもう少しあからさまだったので、その点で言えば今の方が幾らかマシかもしれない。




ーーでも、それでも。

周囲からの好意的ではない視線や雰囲気にさらされるというのは、些か精神をやられるものだ。



かと言って家に帰っても安らげない。私の安寧の地は、あそこではない。



教室の空気に耐えられない私は、昼休みを第二図書室で過ごすことが多くなった。


誰かと喋りながら昼食、という事もない私にとって教室で弁当を食べる時間は楽しいものではない。



何故私は嫌われるのか、心当たりがあるような無いような。少なくとも、周囲に上手く自分を合わせるような器用さを、私は持ち合わせていなかった。





ーー食事を早めに済ませて、昼休みの残りの時間を第二図書室でゆっくりと過ごす。

昼休みに図書室に行く生徒は少なく、ましてや古くて難解な文献や史籍などが中心の第二図書に足を運ぶ人間は私くらいだろう。



昼休みは自分で貸し出しカードに記入してその後図書室担当の教師に判をもらいに行くだけなので、図書委員も居ない。




誰も居ないということは、誰かの視線や私のことを話題にしているだろう女子達のヒソヒソとした話し声を気にしなくても良いということだ。




そうしてすっかりそこが気に入ってしまった私は、昼休みには毎日の様に通い詰めた。今まで、他の生徒に出会った事はない。
< 1 / 15 >

この作品をシェア

pagetop