スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】
 部活の時だけは。サッカーをしている時だけは、桜庭くんは消えてしまわない。

 以前のように私を見つけて手を振ってくれることはもうないけれど、桜庭くんを遠くから見つめるのが、日課になった。

 私は……『忘れさせてあげる』 そう言って勝手に心の中に入り込んできて、キスをして、たくさん抱きしめて、たくさん安心させてくれた優しい桜庭くんの温もりが……、避けられてるのが分かっても、もう終わった恋だと何度も自分自身に言い聞かせても、ずっと忘れられずにいた。

 心に出来た穴は大き過ぎて、埋めるものは簡単に見つかる訳もなく、空っぽの心を抱えたまま過ごした空っぽの冬は空っぽのまま終わって、3月には修学旅行もあったのに、これといった思い出の記憶もないまま春になって……

 4月、私達は当たり前のように3年生になった。
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