スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】
 帰りのSHRが終わると、私はもう一度席に座って帰りの支度をする。

 筆箱を鞄に入れていると「瀬川ー」と呼ばれたので、私は、声の主である武田の席を振り返った。

「今日の体育、女子何した?」

「バレーボールだったよ」

「サンキュ」

 武田は手元の日直日誌に視線を落とす。

そっか、今日、武田 日直だったんだ。体育あってラッキー、と小さく笑みを零した。

 武田は、中学1年から高校2年の今まで、実に5年間もずっと同じクラスの男子。そして、そのほとんどの期間、私は武田に片思いをしている。

 片思いと言っても、告白するとかそんな勇気もない私は、今みたいにちょっと話したりするので十分だった。

「とわ、先に行くね。また後でね」

「うん」

 若菜が手を振って教室を出ていくのを見送って、私も部活に向かう。

 若菜は家庭科部で、私は書道部。若菜の部活がある時は帰りはいつも、若菜と一緒に帰る。

 書道部の活動日は特に決まっていない。顧問の瀧先生が居る日は書道室は開いていて、たいてい放課後は誰かしら部員がいて、話をしたり、書いたりして、まったり時間を過ごす。

 人数もそんなに多くなくて、時々しか来ない人を合わせても全部で15人くらいで、みんな仲がいいと思う。

 書道室は、東校舎の3階の端。下は吹奏楽部が活動している第一音楽室で、ちょっと賑やかだけど、窓を開けておくと風通しも良くて、だんだんと暑くなってくるこの季節でも過ごしやすい場所だ。
< 3 / 206 >

この作品をシェア

pagetop