スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】

 書道室を開けると、珍しく現国の安森先生がいて、なにやら話している真っ最中だった。

 一瞬悩んで、話は聞かずに書くことにした。

 書道室は国語科の資料室も兼ねていて、教室の後ろにも前にもたくさんの本が並んでいる。だから、その資料を見に来た先生が長居して話していくことも、割とよくある事。話が長すぎることも、よくある事。

 話が長そうな時は、加わらない事も大事だと、1年生の時に学んだ。

 書いてる人の邪魔をしない。書道部には、そんな暗黙の了解がある。とても便利だ。

 私が以前書いたものを眺めながら、今日は何を書こうか考えているとドアが開いた。

「お、だいたい皆いるかな? あぁ、安森先生もいらっしゃった」

 書道室を見回して言ったのは、書道部顧問の瀧先生。瀧先生の登場で、話が長引きそうだった安森先生の話はそうそうに切り上げられた。

「これ、今度のコンクールの募集要項。課題はいつも通り古典、現代文、臨書があるけれど、これは全員最低2点は応募すること。それから、1文字書道とデザイン書道の要項も回します。こっちはやりたい人だけでいいよ。とは言え、色々書いてみるのは面白いし、勉強になるから時間が許すなら全部応募してみるのを僕はお勧めするよ」

 瀧先生は「回してね」とプリントの束を前列に座っていた遠野先輩に渡した。

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