クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
ジークは小さく笑うが、その笑みはほんの少し悲し気だった。そして、軍医として多くの流れる血を見てきたという彼の過去が垣間見えた気がして、アンナの胸がきゅっと鳴った。
「お前は? お前は、なぜなぜ薬学を勉強している?」
不意に尋ねられ、その返答に困った。
父が殺された時に見た血の海がトラウマとなり、血を見ることができない。だから医師になる夢を諦めた。などと言えばジークはどう思うだろうか。
「すまない。もし、言いたくないのであれば――」
「違うんです」
無用な気遣いをさせてしまったと。アンナは咄嗟に口を開く。
「私の父は医師だったんです。父のような立派な医師になりたいって、そう思っていた時期もあったんですけど……元々料理が得意だったし、薬膳料理の腕を上げるために薬学の勉強をしているんです。私、本当は不器用なんですよ、頭もいいわけじゃないし、多分医師には向いてないかも」
アンナが明るく苦笑いを浮かべると、ジークは「なるほどな」と納得した。
(ジーク様の前であまり暗い話はしないほうがいいよね)
十年経った今でも拭い去ることができないトラウマは、今でもアンナを時折悩ませている。暗く不穏な過去をアンナは胸の中に押し込むことしかできなかった。
「お前は? お前は、なぜなぜ薬学を勉強している?」
不意に尋ねられ、その返答に困った。
父が殺された時に見た血の海がトラウマとなり、血を見ることができない。だから医師になる夢を諦めた。などと言えばジークはどう思うだろうか。
「すまない。もし、言いたくないのであれば――」
「違うんです」
無用な気遣いをさせてしまったと。アンナは咄嗟に口を開く。
「私の父は医師だったんです。父のような立派な医師になりたいって、そう思っていた時期もあったんですけど……元々料理が得意だったし、薬膳料理の腕を上げるために薬学の勉強をしているんです。私、本当は不器用なんですよ、頭もいいわけじゃないし、多分医師には向いてないかも」
アンナが明るく苦笑いを浮かべると、ジークは「なるほどな」と納得した。
(ジーク様の前であまり暗い話はしないほうがいいよね)
十年経った今でも拭い去ることができないトラウマは、今でもアンナを時折悩ませている。暗く不穏な過去をアンナは胸の中に押し込むことしかできなかった。