クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
そう問われてアンナは目を丸くする。湖にいた時、周りには誰もいなかったはずだ。

「あの時間、ちょうどリデルと趣味の薬草散策に出ていた。リデルがお前に気づいて近づいたが、素っ頓狂な声をあげて走り去るのを見てな」

その時の光景がよっぽど滑稽だったのか、ジークは思い出したかのようにクスクスと笑い出した。

(じゃあ、あのときの人の気配は、ジーク様だったの? は、恥ずかしい!)

みっともなく悲鳴をあげて一目散に逃げる姿を終始見られてしまったということだ。

「レオン様から湖のことを聞いて、ちょっと行ってみようと思ったんですけど……あの湖って、その……」

「ふん、幽霊が出る。とでも言われたか? まったく、余計なことを吹き込まれたな」

アンナが図星を指されて返答に困っていると、ジークはそう言いながら、はぁと息づいた。

「親が水難事故を恐れて子どもに言い聞かせるための常套句だ。実際、私も幼少の頃、父上にそう言われたな。しかし、そんな迷信を信じるのは子どもくらいなもんだぞ」

“お前はまだ子どもだ”と言われているようでアンナは内心複雑だった。
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