クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
(そろそろ戻って昼食の準備をしないと)

そろそろ正午近いはずだ。太陽の傾きでだいたいの時間がわかる。

本を閉じて立ち上がると、ひと際強い風がヒュッと吹いて髪がなびいたとき。

「あっ……」

アンナの髪飾りが外れてしまい地面に落ちた。急いで拾い上げると、傷がついていないか確かめる。その髪飾りはアンナが去年、ランドルシア王国では成人年齢である十七歳を迎えた誕生日にローランド夫妻から贈られた大切な髪飾りで、金の金具にさりげなく花を模った紫水晶が美しく煌めいている。

(よかった、大丈夫みたい)

埃をふっと吹いて指で擦る。すると、今までまったく気がつかなかったが、金具の目立たない場所に、小さな何かを見つけた。汚れがと思い何度か擦って見たものの、どうやら金具に彫られているようで落ちない。アンナはそれが何かの形に思えて片目を瞑ってじっと凝らしてみた。
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