クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「あんたは目がいいんだから、こんなものなくったって見えるでしょうに」

アンナの珍しい所望にミネアは首を傾げながら「ほら」とアンナに手渡した。

「ありがとう。すぐ返すから」

逸る気持ちで食堂の端の席に座り、彫ってある模様の汚れをもう一度拭いてからルーペを通して覗き込んだ。すると――。

「っ!? こ、れって……」

短く息を呑み込んで顔をあげる。

「どうしたんだい?」

固まるアンナを訝し気に見つめるミネアと目が合った。

「な、なんでもない」

見間違いかと思い、もう一度見てみる。そこに見えたのは、ゴブレットの脚に花をつけた蔓が巻きついている見覚えのある紋章だった。

(間違いないわ、風来の貴公子の指輪にも同じ紋章があった。でも、どうして……)

ドキドキと心臓の音が大きく高鳴る。ボブロはこの髪飾りを王都で買ったと言っていた。いったいいつ、どこの店で、という疑問詞が頭の中を駆け巡った。

「ミネアおばさ――」

ミネアおばさんならなにか知っているかもと思い、椅子から立ち上がるとミネアは寝室へ戻ってしまったようですでにその姿はなかった。

(ボブロおじさんが帰ってきたら聞いてみよう)

今日もボブロは城で仕事をしている。帰宅するまでアンナはそわそわしながら待つことにした。
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