クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「たかがひとりの娘のために身元確認など、おおげさだな」

「ジーク様、どこの誰とも知らない怪しい者を城へ入れるわけにはいきませんぞ、だいたいもっと危機感をもってですな――」

「心配は無用だ。案ずるな」

そう言ってジークは薬草をひとかじりすると、瞬時に眉を顰めてそれをぺっと吐き出した。

「やっぱり生じゃ食えたもんじゃないな」

「ジーク様、お言葉に品が……」

「ああ、わかっている」

ジークは二十五になるが自由奔放なところがあり、忽然と姿を消したかと思えば勝手に王都へ出向いたり、供もつけずに森へ行き一日薬草と向き合っている。ロウはそんな気ままな国王にときに振り回され、もう少し国王としての自覚を、と手を焼いている。しかし、国民を心から愛し前国王時代よりも国が豊かになったのは彼の手腕に他ならない。いまだに妻を娶らず公務に没頭していることが、ロウの悩みの種でもあった。
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