クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
どんな人なのかと思いながら返事を待つが、いくら待っても無言のまま。

(もしかしたらもうお休みになっているのかしら?)

もう一度ノックをしてみようと思ったそのときだった。

「あ、んっ! レオン様」

微かに聞こえた女の声にアンナのノックの手が止まる。はしたないと思いつつも、ドアに耳を寄せてみると。

「あ、ああっ!」

今度ははっきりと聞こえた。艶めかしく夢中で喘ぎ嬌声をあげるその声が。この部屋でなにが行われているか一瞬想像し、アンナは短く息を呑んでパッとドアから身を離した。

「誰かそこにいるのか?」

アンナがトレーを手にしたまま硬直していると、部屋から男の声がしてハッとなる。咄嗟に逃げ出したくなる気持ちを押さえて立っていると、ドアがほんの少し開いた。
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