サイドキック
「(……あった…)」
特殊な色で加工された窓。それは外からは中の様子が見られない仕様になっていて、洒落たデザインのそれはこの化粧室によく合っている。
地上から見たこの場所の高さを頭の中で憶測しながらも、その場所に向かって歩を進めていく。
それにしても、また窓かよ。
あいつと再会してからは飛び降りてばかりな気がするのは、私だけだろうか。
「――――さむっ……」
ふちに取り付けられたレバー式のそれを、思い切り上に引っ張る。
その瞬間頬を強く撫ぜた風に思わず目を瞑った。
でも、それよりも。
私の視線を独占したのは、地上に佇む男の姿。
にやりと口角を上げるそいつ。「早く来いよ」とでも言いたげに歪められたその表情。
思わず眉間にシワを刻んで奴を見下ろした。
高さは取り立てて言うほどでもなく、少し安堵に胸を撫で下ろす。
―――――この間パーティ会場の窓から飛び降りたことを思えば、こんなの微々たるモンだ。
「……チッ」
忌々しさを最大級に詰め込んだ舌打ちを零した私は、履いていたパンプスを手に持ち窓枠から身を投げ出した。