サイドキック






まさかのヒロヤBLフラグを感じながらおずおずと言葉を音に乗せる私に、間髪を容れず声を張り上げた男にほっと安堵の息を吐いた。

でもまあ、うん。そうだよな。

コイツは昔から女と知ったら見境なく獣と化す男だから。





「変わってないようで良かった」

「……お前は何を心配してんだよ」

「聞くな。杞憂として終わったんだから思い出したくない」








ふるふる首を横に振ってそう口にする私。

そんな此方の様子を見て、



「(……コイツ…)」

「あ?なんかヒロヤ顔赤くね――」

「うっせぇよ!気のせいだ気のせい」








そんなことを言いつつも明らかに顔が赤い。

でも突っ込んだらまた怒鳴られそうだから大人しく視線を向けていれば、漸く落ち着いたらしい男が再び薄く口を開いた。




「で、本題に入るけどいいか」

「あぁ、うん」

「(こいつ絶対忘れてただろ……)」





明瞭に怪訝さ剥き出しの視線を投げ掛けてくる男のそれから逃れるように顔を背けていれば、わざとらしい咳払いの音が耳に入りそろりと視線を戻す。







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