サイドキック
「昴さんと稜さんの結婚が正式に決まったんだ」
「………、」
「あ?どうしたんだよ」
怪訝そうに眉根を寄せる私を目にしたヒロヤがそう問い掛ける。
一度だけ躊躇ってから、私は。
「―――なんでそういう情報が先にお前のほうにいくんだよ」
「ソコか。お前がジェラシー感じたのはソコなのか」
「はあ……」
遣り切れない、と言わんばかりに溜め息がこぼれ落ちる。
「だって、総長は俺だったろ」
肩から零れる髪を背中に流しながらそう述べれば、目の前に居る男の視線を感じて顔を上げた。
「……、…」
「………」
「………なに見てんだよ」
「ユウキ」
なんでそんな、穏やかに瞳を細めて見てくるんだよ。
そんな風に見られたら落ち着かない。
思わず逃れるように視線を逸らす私を、奴は追うように言葉を口にした。
「もう肩肘張ってた昔とは違う。それにお前は女だろ、無理に"俺"なんて遣わなくて良いんだよ」