サイドキック






「あ、結城さんやっほー」

「あたし達こんなに近くで見るの初めてじゃない?すご、ほんと綺麗」

「い、………いや…」



躊躇うこと無く至近距離で見詰めてくる彼女たちにどぎまぎと言葉に成り切らない声音を返す。

そんな様子を隣で見ていたらしい友人は「ちょっと、香弥困ってるって」と苦笑を零しながらも手を貸してくれた。

善く善く見てみると確かに初対面の子も結構居る、かも。









「はーい、じゃあ皆集まったことだし。男子が来る前に作戦を練ろうと思いまーす」






不意に手を高く上げてそう声を落とした友人を驚くままに見詰めていれば、「なあに香弥?あたしに惚れちゃ駄目よ」なんて。

思わずジットリと瞳を細めて睨む……まではいかないけれど、それに近い視線を送ってしまった。

私が本当に睨んだら色々と不味いだろうし。










友人の話では、どうやら今日顔を合わせた彼女たちは同じサークルに属するお仲間さんらしい。

「サークルの飲み会」と称していたにも関わらず男子は別の大学の人たちなんだとか。

剰え今日が初対面だと言うのだから、今夜のこの会は合コンで間違いないだろう。







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