Lonely Heart

グループのメッセージはいつまで経っても鳴り止まない。

相も変わらずくだらない話で盛り上がっている。


ーガチャっ


玄関のドアが開く音が聞こえた。

いつも誰も家に帰ってこないのに珍しい......

別にどうでもいいやと思いお風呂へ向かう。


「おったんや」

帰って来ていたのは母で、目も合わさずにそう言う。

私はそんな言葉を無視してそのまま歩き続けた。


家の中では空気と同じ.......


そんな扱いにももうとっくに慣れている。


はやく働いてこの家を出たい。

それしか思わない。

普通の家族ならみんなでご飯を食べてたわいもない会話をしてもっと愛に溢れているはず。

私たちも昔はそうだったのに。

リビングを超えて1階へ行く階段を降りようとしたとき.......


「痛っ!!なにすんねんな!!」

どこでスイッチが入ったのかわからないけど、突然母に髪の毛を掴まれる。

「なにすんねんちゃうやろ!!毎晩どこほっつき歩いてんか知らんけど、もうちょっとお兄ちゃん見習え!!」

そしてそのまま顔を床に叩きつけられる。

何回も何十回もフローリングに顔を叩きつける......

家中にその痛々しい音だけが響き渡り、床には私の顔から出ている血がぽたぽたと落ちていく。

そういうのも慣れた。

別に自分がどうなったって構わない……

.......前までならそう思っていたのに


.........助けて.........

頭の中には、ほなみやまよ、ミヤモたちの顔が浮かんだ。

それと同時に涙と悔しさが込み上げてきて、私の髪の毛を掴む腕を力いっぱい振り払った。

そしてそのまま家を飛び出した。


財布も携帯も持って来なかったから行く宛があるとすればめぐの家。

「瑠奈!!」


私を見るなり驚いているめぐ。

すぐにお風呂に入りなと言ってそのままお風呂に入った。

そのとき初めて自分の顔を鏡で見る。

擦り傷のところが赤くなっていて、唇からは血が流れて腫れている。

明日には頭にコブができるはず........

頭がズキズキして、お湯が傷にすごく染みた。


「大丈夫?」

お風呂から上がってめぐの部屋に入ると暖かいコーヒーを用意して待っていてくれた。

「うん、ありがと」

心配そうに私を見つめるめぐに笑顔を向けた。

いつも何かあるとめぐの家にくる私を何も言わずに受け入れてくれて、何も言わなくても分かってくれる。

「瑠奈.........」

強がっていることもめぐにはお見通しで、私をぎゅっと抱き寄せる。

その優しさと人の温もりに触れて堪えていた涙が溢れ出す。

声を出してひたすら泣きじゃくる私をぎゅっと抱きしめたまま落ち着かせてくれた。


「何かあったらいつでも来ていいんやで。」


私には居場所がある。

それだけで救われた気がした。



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