諸々ファンタジー5作品

エピローグ

『音の無い曲』



私は『独創サイト』の画像に既視感があった。

壁に、色彩豊かな絵画が並んでいる音楽第一教室。



ラピスラズリ……

アジュールとアズライト。



亡くなったお姉さんが果たせなかった難攻不落の城の攻略法を、タクマは見つけた。

それが『寄託の回復魔法』……ヒロインの必要性。



『未來を選んだのは接触が欲しかった……運命。』





吹丘 多久磨(すおか たくま)



俺は貪欲に染まり、偶然と必然の様なタイミングに思考を占拠された。

夕焼けの逆光が、キスシーンのシルエットを見せる。

音も無く、教室を通り過ぎた俺の目に偶然入った光景。そして、それが君だと知った俺は言葉を失う。

そう……キスシーンを見たのは俺。彼女は、何も見ていないんだ。





私が知らずに生み出した、無音の世界。

あの日、音楽第一教室にいた貴方は外にいる私と目が合ったと言うけれど、私は知らない。



『君は、俺のヒロインだよ。』






こな雪とぼたん雪の混ざるホワイトクリスマス。

防音の施された一室で、偶然に目に入った光景。長い黒髪に白い雪が残って、頬を伝う涙が光る。

視線を奪われた俺から雪が視界を塞ぎ、焦る心に反応するように雪を払い除けた風。

涙が散って長い黒髪が宙を舞う。

無音の一瞬、方向を変えて走り去る君の眼が俺の心を射抜いた。





音の無い曲。

奏でるのは不明な世界。



一瞬の生み出した世界に囚われ、二度と得られないような偶然に、想いを馳せて……

無音な奏曲の囚われ人たち…………





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