未知の世界6


温泉宿も温泉街も全て堪能した一泊二日の旅行は、とても幸せな思い出の一つになった。
仕事のことは一切考えず、お互いのことだけを見つめ合えた旅行に、夫婦であることを改めて感じることができた。







そんなゆっくりとした幸せな時間は、終わってみたらあっという間で、気づくと明日は第二やごな病院での小児外科研修となった。





『研修は直接病院に行くんだよな?』




寝室で明日の準備をしている私に、既に寝る体勢の幸治さんが尋ねる。





「はい。明日はうちの病院に出勤して、荷物を持って第二へ行きます。
明後日からは直接行って研修を受けます。」





『そっか。終わる時間も遅いんだろうな。』





たぶん、そうだろうな……





『第二に俺の知り合いが呼吸器内科にいるから、そいつに毎日吸入させるように言っといたからな。』




「へっ!?第二でも!?」




知らない間に根回しされていて、驚く。





研修先の病院でまで吸入か……。




『当たり前だろ。
第二の次に待ってるのが、一番のメインだからな。それに体調を整えるなら、今からしっかりやっておかないと。



アメリカ行ったら、誰も頼れないんだぞ。帰りたくても帰ってこられないし。』





幸治さんに改めてそう言われると、考えないようにしていただけあって、次第に不安が募ってきた。





すると背中がスッと温かくなる。





『大丈夫だから…。もし何かあったら俺が飛んでいくし。
お前は自由にやれ。』





後ろからギュッと抱きしめられると、さっきまでの不安はスッと消えていた。





今は明日からの第二での研修に集中しなくちゃ。





そう言い聞かせ、気持ちを入れ替え明日に備えた。
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