未知の世界6

『それだけで足りるのか?』






注文してすぐに出来上がったうどんを見て、反対側に座っている岡本先生が聞いてくる。






「はい、充分です。」





ホントか?という顔でたけるを見る岡本先生。






『これを完食できたらいい方だと思います。』






たけるが答える。





『はぁ?』






未だに信じられないという顔の岡本先生が、




『そうだそうだ、椎名先生も来るから。』





えー!?なぜ…。





と驚いてしまう。




『椎名先生って……』





たけるがボソッと呟く。





「この病院にいる間に、私の喘息を診てくださる呼吸器内科の先生だよ。
幸治さんの友達みたい。」






『そうなんだ。』





何か納得しているような顔のたける。





そんなことを話していると、椎名先生がお盆を持って、私たちのところに現れた。





『すいません、お待たせしました。』





椎名先生が岡本先生にそう言いながら、隣に座る。





たけるを椎名先生に紹介して、食事に手をつけた。






『えっ!?それだけ?
ってかそれって…子供用うどんじゃないのか?』





まぁそうだけど……。






「子供用は薄味で、汁も作り置きしてない方が多いので…。」





心臓の病気をして、未だに薄味や新鮮な食事に心掛けている、つもりで……。





『まぁそうか…それでも少な過ぎるから。』




と言い、まだ手をつけてないおかずの中で1つ椎名先生が私の丼に……。






ちくわのてんぷら……





『じゃあもう一つ……。』






と今度は岡本先生が私の丼に。





唐揚げ……。






「……あ、ありがとう……ございます。




でも……食べられるかな。」





と隣のたけるに助けを求めてみたけど、全く気にせず自分のご飯を食べている。






「たける〜。」





『それくらいは食べられるだろ。』






と椎名先生に言われる。






「たける〜」





と再び泣きつくと、





『いや、それは食べれるだろ……





まぁ、食べれなかったら食べてやるから。』





と私に甘々のたける。





『早川、おまえは甘すぎないか?』





椎名先生に言われて手を止めるたける。





『そうなんですよね、僕。
でも、医大の頃から知ってるんですけど。かなは変なところで無理して、後で大変なことになるのがいつものことで……。なので僕が逃げ場を作ってやらないと……。』





そんな……たける。私のことをそこまで考えてくれてるなんて。





胸がジーンと熱くなる。







『あ、最終的には同期の僕がいつも大変な思いをすることになるんでね、ハハ。』





と最後は照れ隠しか、それでも嬉しかった。






『無理するのか……?』





と口を出したのは椎名先生。





『研修も気をつけないとな。』





とギロっと私を見る。






ハハハ……ここでも監視してくる人ができたみたい……。






と視線を逸らした。
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