未知の世界6
『という訳で、お前が責任持って氷嚢当ててこい。』
休憩室にて、先ほどの耳鼻科医からの診断結果を幸治に説明していた。
『はぁ〜、耳までそんなことになってんのかぁ。
あの時、隈なく調べとかないといけなかったな……。』
幸治はかつて、かなが病院にやって来たときのことを思い出して頭を抱えた。
『そうだな。だけど当時こそ、そんな余裕がないくらい荒れてたんだろ?かなちゃん』
『まぁな。殻に閉じこもって、何しても心は開かなかったな……。
初めて診察に来た時、身体中を見て相当酷い目にあってることは分かったけど。本人は頑なに隠そうとして…。
それから色々あって…施設で何されてたか、やっとの思いで聞き出せたけど、被害に遭った一部くらいだから。
正直、今も心の中は解決できてないんだろうな。』
『一生苦しむのかもしれないな…。
そういえば、かなちゃんは実の両親のことを気にしていたな。
だけど私に、言わなくていいって。思い出したくないからとも言ってた。
結構気にしてるんだろうな。』
『あぁ。思い出しては暗くなって、自分を責めて辛くなって……。
負の連鎖が続いてるんだろうな。
入院中はいつもそうだ。
仕事してたら忘れる物も、何もしてないと思い出しちゃうんだろうな。』
『毎回毎回、それをしっかり聞いてやることしか、前に進む方法はないんじゃないのか?
だから、氷嚢当てて来てやれ。』
そう言われ、渋々席を立った幸治は、かなの病室に向かった。