未知の世界6
それから孝治さんはあまり部屋に訪れることはなく、私の体調は順調に回復していった。



ただ胃がチクチク、ギスギスするのはあったりなかったり。
熱が出なくなって、心電図の状態も良くなっていたので、ひとまず退院することとなった。






完全に研修での疲れが出た入院生活だったけど、今回は思っていたより長くなってしまった。
耳の痛みはないけど、孝治さんに叩かれた時の感触は覚えてる…。
孝治さんとはあれからそのままなので、それを思うと感触を思い出し、胃が痛む。






胃炎も言えないままで退院してしまい、これがバレたらもうおしまいな気がする。






はぁ、海外研修も控えてるのに、こんな体では……。







いろんな悩みを抱えながら、重たい足取りでお母さんと病院からマンションに帰ってきた。






『かなちゃん、疲れたでしょ?』






お母さんは本当に優しい。この入院生活でのことも全て聞いてるはずなのに、私を責めたりしない。





『ねっ?荷物は私がやっておくから、部屋で休んでらっしゃい。』





ボーっとしていた私の前に顔を出すお母さん。





「あ、ありがとうございます…。少し休んできます。」






そいういと、気にせずゆっくり休んでたらいいから、と返事が返ってきた。




     


しばらくはお母さんがここに来てくれる。たぶんお父さんも来るだろうけど…。
いつも退院してから、こんなに早くお母さんが来るってことはない。
だけど、今回はまだ不仲な私たちを何とか取り持ってくれるためだと思う。
不仲…というより、未だお怒り中の孝治さんってところだけど。







寝室に行くのも気が引けたので、自室へ閉じこもった。
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