そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
まだ15分もあるのに。
駅までの距離はそんなにないのに、私の足は勝手に走り出していた。

心地よく胸が高鳴っていて、一昨日まで高熱があっただなんて感じられないくらい体も軽い。

結局美容院にいけないまま、目にかかるほど長くなった前髪を走りながら掻き上げた。

会いたい、早く顔が見たい、だたそれだけ。

こんな気持ち、きっと東條さんからみたら子供みたいだって笑われるんだろうけれど、子供だって構わない。

だって、これが私なんだもの。

東條さんに近づくよう背伸びしたって、私は私なんだから。

どうせ、相手にされないなら、少しでも私という人間を知って欲しい。

そんなことを考えられるようになったのも、東條さんと出会えたからだ。

彼と出会えなかったら、誰かを好きになって、こんなに幸せで苦しい気持ちなんて味わうことはなかっただろう。

駅前のバスロータリーに着き、腕時計に目をやるとまだ約束の時間は来ていなかった。

深呼吸して、乱れた髪を整える。

バッグに入れていたスカーフを首に巻いた。

その時、ふわっと大きな風を起こしながら一台の黒いセダンが目の前に停まる。

助手席側の窓が開き、運転席に東條さんの顔が見えた。

「お疲れ。乗って」

彼は前を向いたままいつものようにクールに言うと、視線だけ私に向けた。

きれいな切れ長の目。

私の大好きな意地悪だけど優しい目が私を見つめている。

「はい!」

私は上気する体に押し出されるように大きく答え、助手席に乗り込んだ。

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