そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
電話を切った後、ソファーに座っていた東條さんが広げていた新聞を閉じこちらに顔を向けた。

「どうだった?」

「週末は、丁度お兄ちゃん達も帰って来てるみたいです。それはいいんですけど、やっぱり祖父がネックになりそうかな」

私はキッチンで、冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターをコップに入れると、東條さんの座っている横に腰を下ろした。

「いいさ。誠意を持って気持ちを伝えれば、いつか信じてもらえるはずだ」

「いつか、って。気の長い表現ですね」

「それくらいの覚悟で挑んだ方がいいだろう?俺も何度か君のおじいさんには仕事でお会いしたことがあるが、とてもまっすぐな方だから、俺も嘘偽りなく自分の気持ちを正直に伝えるつもりだ。きっとわかって下さるよ」

ソファーの背に片肘をついた東條さんはもう片方の手で私の髪を優しく撫でながら、私の気持ちに寄り添ってくれているようだった。

「そうですね。私も焦らずわかってもらえるまで自分の気持ちを伝えていきます。だけど、あの火事の日、私を助けてくれたのが東條さんだって伝えればすぐに許してくれそうですが」

私は躊躇いがちに彼の横顔に言ってみる。

東條さんはそれだけは絶対言うなって言って聞かなかったから。

「前にも言ったがそれは言わない約束だ。あの日のことは誰も見ていないし俺が助けたかどうかなんて確証はどこにもないんだ。実際友梨だってそうだろう?そんなことよりも、俺は俺自身を理解して許してもらいたい。もうその話はするな」

「はい」

彼の思いが強いことをあらためて感じ、これ以上彼を説得することは断念した。

東條さんの性格から、当然のような気もしたし。

そんな東條さんだからこんなにも惹かれるのかもしれないと思いながら、コップの水を口に含んだ。
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