そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
GMは笑うのを止め、顎に手を当て黙ったまま私を見つめていた。

本当に泣きそうになり、これ以上涙を堪えられないかもしれない。

もう何もかもが情けなくて、辛くて、そんな風に考えてしまう自分が嫌だ。

「・・・・・・そんなことはない」

気のせいかもしれない。

GMが小さな声でそんな風に言ったような気がした。

「今日は座談会での君の質問は全て俺自身、身につまされる内容だった。そのお陰で初心に戻ることができ感謝しているよ。それなのに、君を不快にさせるようなことばかり言ってすまない」

「い、いえ、私こそ怒ってばかりですみません」

急にそんな塩らしく謝られたら私の方こそどうしていいかわからなくなる。

「今午後七時過ぎだが、岩倉さんは今日はこのまま家に帰るの?」

もう、そんな時間なんだ。

GM室の小窓から見えた暗闇に体がぞくっと震える。

またあの家に1人で帰らなくてはいけない。

帰るということが、ただそれだけの当たり前のことなのに心も体も震えた。

「今日のお詫びといっちゃなんだが、俺も今から帰るんだ。よかったら家まで車で送らせてくれないか」

「え?」

GMは優しい目で微笑んでいる。

この目は私をだまそうとしている?

それとも信じてもいい目なの?

だけど、今一人で帰るのはとても辛い。誰かが扉を開けるまでそばにいてくれたらどんなにか心強いだろうか。

こんなこと東條GMにお願いするのは恐れ多いこと。本当は断らないといけない立場だってこともわかってる。

だけど、今の私には藁にもすがる思いだった。

「いいんですか?」

「ああ、もちろん」

「じゃ、よろしくお願いします」

GMの目を見つめながら言うと、彼は前髪を掻き上げながら立ち上がった。

「じゃ、遅くならないうちに送るよ」

「はい、ありがとうございます」

私もGMに続いて立ち上がる。

GMはオフィスビルの前に車を回しておくからと言って、クローゼットから自分のトレンチコートを取り出し羽織った。

私は頷くと、自分のバッグを取りに行くため一旦GM室を出た。

部屋を出たすぐ先に人影。

驚いて思わず締めた扉に体をぶつける。

「おかえりですか?」

その人影は山村さんだった。

能面のように表情のない顔で私に尋ねる。

「はい、失礼します」

私はその場から逃げるように会場に戻った。

無表情の美人はやっぱり恐い、と思いながら。


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