最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
水沢さんがニコッと笑ってオフィスを後にすると、チラリと壁時計を見た。
時刻は午後六時二十分。
最終電車までには帰りたい。
オフィスには私ひとり。
パソコン画面に視線を戻し、作業に没頭した。
私は東雲香澄、蓮見不動産に勤めるOLで二十七歳、独身、彼氏なし。
背は百六十センチ、腰まであるカールがかったブラウンベージュの髪をシュシュでまとめ、いつも黒縁メガネをかけている。
蓮見不動産は日本で五本の指に入る有名不動産会社で、国内外に二十を超える支社と営業所があり、丸の内にある三十七階建ての本社ビルには七百人もの社員が従事している。
私は入社してからずっと本社の経営企画部に在籍していて、女性社員の中では一番年長者。
「あれ?東雲、まだ仕事してんの?」
客先から戻って来た田辺君が私を見て驚いた顔をする。
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