隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー

どうにか必死に冷静になってそう返すと、莉子が力なく首を横に振った。

「莉子、最後に一つ聞いてもいい?」

「うん」

「莉子の好きな人って、どんな人?」


馬鹿か俺は。
そんな事聞いてどうすんだ。

わかっているのに、見えないその誰かに嫉妬して仕方がないのに、そう聞かずにはいられなかった。

「どんな人…って聞かれても、難しいけど」

莉子はそう前置いて続けた。

「優しい人…かな。私の中身とか、私自身の事を見てくれる人なの」

そう答える莉子の声は穏やかで澄んでいて。
心臓が抉られるような痛みを感じながらハンドルを回す。

「素敵な人みたいで良かった。
上手くいくといいな」


上手くいくといい。口から自然に溢れた言葉は嘘ではなく本心だった。
幸せになって欲しい、莉子には。
俺が幸せにしてやれなかった分、莉子を幸せにして欲しい。笑顔にしてやって欲しい。


多分この先、
まだ俺はこの気持ちを引きずるんだろう。

莉子とは結ばれない運命だったのだとわかってはいても、後悔ばかりが募る恋だ。
一度は付き合っていたことがあるから余計に。




───私の初恋は湊人だよ。




いつか聞いた莉子の言葉が、こんな時に蘇る。 
これだけ好きな人の初恋は俺で、
俺達には確かに想い合っていた時間があって。

それだけでもう、何だか報われるような気がした。
< 183 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop